Project Chandigarhby Pierre Jeanneret

PHANTOM HANDS

3. 木工房

ファントム・ハンズの工房は、インド南部にあるカルナータカ州の首都バンガロール郊外の準工業地帯にあり、広さは1500平方メートルに及びます。

今回はその中の木工の工房についてのお話です。

文化
木工職人は、ラージャスターン州、ウッタル・プラデシュ州、ビハール州、ベンガル州、ケララ州などの出身で、インド各地の伝統的な木工コミュニティから集まっています。

インドの多くの木工職人と同じように、ファントム・ハンズの木工職人も床に座り込んで作業します。手だけでなく足も使うことができるため、作業中に木材を所定の位置に固定することができます。職人一人ひとりが手工具を個人で所有し、研磨とメンテナンスを毎日の日課としています。


職人たちは床で作業することで、製作工程に柔軟に対応し、手先の器用さを発揮できるようにしています。

職人が伝統的な木工コミュニティから受け継ぐ文化の中でも儀式は重要です。工房に新しい工具などが登場するときは、使用する前に祈りの儀式を必ず行います。

機械
手工具を用いた職人技がファントム・ハンズの核となりますが、木工房には、切断、サイジング、ルーティング、穴あけなどの精密作業を行うための、プレーナー、厚み調整機、テーブルソー、バンドソーといった標準的な木工機械も装備されています。これらの機械はすべて集塵機に接続され、集塵機によって周囲の粉塵を除去し、工房をクリーンに保っています。


木材の表面を削り、完璧なまでに滑らかで平坦になるよう仕上げます。

品質管理
ファントム・ハンズは、手づくりがもたらす可能性を大切にしながらも、品質基準の維持を重視しています。製作単位ごとに木材を慎重に選択し、オリジナルの基準テンプレートに沿って切断します。続いて各ピースを成形し、やすりをかけ、最後に組み立てます。木工工程の段階の一つ一つがテンプレート化されており、家具のすべてのピースについて、デザインの一貫性が保たれているか常に検査しています。


テンプレートを使用して、既定の寸法に準拠しているかを検査します。

工房
制作施設の屋内外エリアでは自然光と自然換気を十分に取り入れることで、健康的で風通しのよい作業環境をつくり出しています。LED照明と排気ファンによって自然光と自然換気を補います。

健康と安全
ファントム・ハンズは、インドの工場法に定められた健康安全規定に完全に準拠しています。すべての作業場で応急処置キットを利用することができ、各エリアには消火器が複数本設置されています。また、火災安全訓練を頻繁に実施しています。機械で作業する木工職人は、訓練を受けるほか、マスク、安全ゴーグル、グローブなどの個人用安全用具の使用も義務付けられています。

安全用具を装着しての丸鋸作業安全用具を装着しての丸鋸作業

2. 籐編み

今回は籐についてのお話です。

籐編みは、とても手の込んだ工芸であるため、時間も労力もかかります。パターンの複雑さにもよりますが、ファントム・ハンズの職人は1つの家具を編み終えるのに1~3日を要します。

籐編み職人
籐編み職人は、チェッティナード地方タミル・ナードゥ州のカライクディ町の伝統的な編み職人のコミュニティと、ファントム・ハンズが拠点を置くバンガロールから集まり構成されています。何十年にもわたる編みの経験と、何世代にもわたり継承された工芸技術や素材の知識が、製作工程に活かされています。


簡単な道具を使って籐ひもを必要な厚さ3㎜または4㎜にはぎとります。籐のはぎとりを専門とする職人が3~4人の編み職人と一緒に作業しながら、籐ひもを次々と供給していきます。


はがした籐ひもを水に浸して柔らかくすることで、編みやすくなります。


この写真に見られるクロス編みは、伝統的なかごめ編みに代わる編み方です。(基本的には強度の高いかごめ編みにて承っておりますが、ご要望にてクロス編みでも制作可能です。)

材料
ファントム・ハンズの籐は、インド北東部より調達しています。籐は、ラタンの茎の外縁から平らな帯をはがすことによって得られます。籐は弾力性のある天然素材であり、手編みされた籐の座面と背もたれは、適切に使用されると、たるみのない状態を何年も保ち続けることができます。

1. Phantom Hands

インドの工房「ファントム・ハンズ」で製作される家具の特徴は、当時と同じ手仕事による「工芸家具」という点でありながら、他の追随を許さない圧倒的な職人の技術と製品のクオリティの高さです。素材は、築100年以上の建物に使われていた古材と、貴重なミャンマー産チーク(本チーク)の新材の両方を製材して利用しています。彼らが当時のままの素材や製作方法にこだわるのは 、ピエール・ジャンヌレが遺したデザインと、当時の製作背景やその後辿った複雑な歴史を、未来に「正しく」継承するためのものと言えます。